団 鬼六「鬼六の将棋十八番勝負―昭和・平成の強者たちに王手」
- 団 鬼六
- 1999-03
- 単行本(ソフトカバー)
- by anzu_clip
いつもの鬼六節なわけだけれど、今考えるに棋士に対する見方というのは誤っているといわざるを得ないなと。心情的には凄くわかるけれども。
まえがきを読めば分かることだけれど、著者は棋士が、将棋ばかり指している連中でありその結果世事にうとく純朴であると考えている。なので
こうした人間の遊び心を持ち合わせた棋士の集合体である将棋連盟には何か俗悪世界から孤立したユートピア世界を感じる事がある。
んだそうだ。
…。
んなわけねーだろと。人間が組織を作っている以上、純朴で世事に疎けりゃ騙されて解体されるに決まっている。だから棋士の中にはそういう俗悪というより一般社会とのやりとりを担う人間がいたわけですよ。表層ではそういった人物はクローズアップなんかされませんから目につきませんけれど、必ずいるわけで。団さんがそれを知らないわけないんだから、あれだな、理想化しちゃっているんだろうな。
棋士同士だってどろどろした関係はあちこちにあったわけで(米長vs武者野、女流分裂とか etc...)、逆にどうしてそんなふうに考えてしまったのか謎。
まあそのことを除くと、棋士の生態が活写されていて楽しい1冊であります。林葉直子にまんまと一杯食わされた勝浦の純朴さを見ると、確かに人間の純朴さを信じてもいいかも、と思ってしまうけれど、彼は勝負師。目の奥は笑っていないのだよ(勝負限定だけど)。