「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法 (新潮新書)

「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法 (新潮新書)「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法 (新潮新書)
深田 和範
新潮社
2009-10
新書
by anzu_clip

派遣切りの次に来るのは、かつてのエリート正社員たち、すなわち「文系・大卒・30歳以上」のホワイトカラーの大リストラである。低成長が続き、就業者総数が減り続けてきたここ十年でも、ホワイトカラーは「本当は必要のない仕事」を作って水ぶくれをし続けてきたからだ。「数年以内にホワイトカラー一〇〇万人がクビになる」大失業時代に何が起きるのか。そしてどう備えるべきなのか。生き残りの処方箋を提示する。

酷いな。サブタイトルの「処方箋」ってどこに書いてあるんだ? だれに向いて説いているのか不明かつ、どちらかというとクビを切る側擁護であって、本当に困っている「文系・大卒・30歳以上」が浮かばれない一冊だ。

内容は上のサマリーで十分。ここでいうホワイトカラーは営業以外でデスクワークが中心の従業員を指している。企画、総務、人事、経理、法務、監査、広報、システム部といった間接部門は金を作らないからクビの切り甲斐があるよね、という話。会社への貢献も営業部門に比べて評価が難しいからやりやすいし。本書では《ホワイトカラーは、会社において存在しないほうがよい。》とまで言い切ってる。《ホワイトカラーの大量失業時代の到来は「企画・管理のようなデスクワークが高付加価値を産み出すと考えられていた時代の終焉」でもある》んだって。

さて、そうやってクビになった方々への「大失業時代を生き抜く発想法」はというと――

  • 男性が家計を支える → 家族全体で家計を支える
  • 家庭においては、夫婦間の役割を固定せず、世帯全体のライフステージに応じた家計維持及び家事・育児の分担を考える

なにこれ。共働きしろってことかwwww。これはおいらの親の時代からいわれてきたし、やっている家庭も多かったと思うんだけれど…。

もちろん、現実がそう簡単にかわるわけではないだろうが、今後は、このような発想の転換が必要となると考えておいていいのではないか。

と、完全他人事発言からもわかるように著者は発想法なんてなんにも考えていないことがわかります。そして、

ホワイトカラーの大量失業は、新しい社会を構築するうえで避けることができないプロセスである。だから、ホワイトカラーは、それを過度に恐れたり、そこから逃げたりしてはいけない。現実を直視し、それぞれがこれから構築される新しい社会を思い描いて、ホワイトカラーの大量失業時代に立ち向かって行くことが必要なのである。

無責任、ここに極まれり。

私達は、もはや、不安定であることを恐れてはならないのだ。

いやいやいや、不安定はイヤだろよ。

本書は第4章に具体的にリストラに追い込む手段や第6章に経営者としてのスタンスが書かれていて雇われている側としては笑えない内容に仕上がっています。

まえがきにはいいこと書いてあるんだよ。《今や、すぐにでもホワイトカラーの大量失業時代に突入しかねない状況になっている。もう、グズグズしてはいられない。厳しい見通しであっても、それを直視して、今からできることを準備しておくべきだろう。》と。私はその準備について書かれている思って期待して読んだんだよね。結果、共働きできるようにしておけ、あとは恐れずに頑張れ、という根性論。

著者は企業御用達で、企業側にたって講演してきたんだろうねぇ。組織再編や人事制度改正は得意でも、個人の生き方をまともに指し示すことができないんならこんな題名で本を出版してはいけません。詐欺です。反省して下さい。