老ヴォールの惑星
老ヴォールの惑星 (ハヤカワ文庫 JA (809)) 小川 一水 早川書房 2005-08-09 文庫 by anzu_clip |
ライトノベルもあらかた征服したように思うので久々にSFへと帰還。手始めに小川一水「老ヴォールの惑星」を手にとってみました。未来の世界や、宇宙を扱っているからSFに分類されるのでしょうが中篇が4つとも、異常環境にどう折り合いをつけることが可能か、という思考実験ものだといえましょう。
それぞれ味わい深く面白かったのですが、長期出張をしている私には「漂った男」が堪えたな。
宇宙の果ての無人惑星に不時着した主人公が救援を待つのですが、その地があまりに広くかつ、サーチするのに時間が掛かるため実質サルベージ不能な状態に陥ります。無指向性の通信機器で会話をすることが可能なんだけど、どこにいても通信可能なこの機器、場所を逆算することすら不可能なんですね。だけど会話だけは出来る。加えて不時着した惑星は水が食べられてそれを食っている以上死ぬことがない。しかし帰還できる希望は零。そんな環境を生き抜いていけるだろうかねぇ…、という話。途中も切ないが、最後、彼が救われたかどうかはなんともいえないな…。
若い日本のSF作家、思ったよりいけますな。