疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫 う 17-2)

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)

  • 作者/主演: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007-09-25
  • メディア: 文庫
  • by anzu_clip

親父がどうしていつも自宅で不機嫌だったのかが、本書でようやくわかったような気がする。曰く、

 人生のある段階で(たぶん、かなり早い時期に)、不愉快な人間関係に耐えている自分を「許す」か、あるいは「誇る」か、とにかく「認めて」しまったのです。そして、その後、「不快に耐えている」ということを自分の人間的な器量の大きさを示す指標であるか、人間的成熟のあかしであるとか、そういうふうに合理化してしまったのです。

親父は長男であり一族の長であり、本当はふざけた性格の適当人間だったにもかかわらず周囲の圧力から逃れきれずに、不愉快な人間関係を強制されてしまったのだなぁ。そしてその不愉快な人間関係が受け継がれてしまったのだなぁ、とか。

そのほか、フェミニズムの趨勢とか体に耳を傾けるとか家族の関係とか、現代のイデオロギーといえば大げさですけど、生き方、スタイルの行き詰まりをなんとなくやり過ごす考え方を教えてくれる1冊で、これは思いのほかよい拾い物だった。語りおろしということもあって読みやすいし。猫猫先生が嫉妬するのもわかる。おススメ。