橋本治と内田樹

橋本治と内田樹

橋本治と内田樹

本書は対談集なので、テーマといってもとくに明確じゃなく話題は飛びまくりであちこちに橋本治の思考スタイルが散りばめられています。テーマ毎にまとまっているわけではないので、読み手としては適当に開いたページの内容を自分で吟味して糧にするのがいいですね。

読了してわかったことは、橋本治を「理解」しようとしても無理なんだな、ということ。というのも、橋本治は作品の対象になっている世界や人物に憑依して、その世界の意識で物事を語ってしまう。江戸時代ならその時代の文献からその時代を自分の中に構築してしまいその住人となってしまうのですね。加えて橋本は憑依する対象がくるくる変わってもぶれることがない。普通の人はそこまで没入できないし知識もないしあえて勉強もしないし意識の切り替えもできないのでついて行けないです。

それはもちろんプロの書評家でも同じ事で、橋本と同程度の知識が最低ライン必要になるわけですが、橋本は普通の人が目を通さない本ばかりを渉猟しているし、書く分野もバラバラすぎてついていけないのだろう。彼をまともに論じる技量がある人物はいつでてくるのかしら。なお、書評もしていた橋本治曰く、書評って

橋本 私は批評は要らないんです。ちゃんと紹介してくれれば。

 ちゃんとした紹介が最大の批評だと思っているんです。いまは紹介の仕方が下手。私がこう読みましたというのが紹介になっているけれども、それじゃ感想文じゃん。帯に書いてあることを、ちょっと転載してみたり。「これはこういう本だから読むべきです」というのが、ちゃんとした紹介文なんです。紹介文が書けなくなっているんですよね。紹介文でさえ、感想文になってしまっているということが最大の問題だと思う。

耳が痛い批評家、書評家、多いんじゃないかしらねぇ。


参考作品(amazon
橋本治作品集
内田樹作品集