100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル)

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル)

嗚呼、なんかすげーもったいないです!
スタイルとしてはウルトラ名著サイモン・シンフェルマーの最終定理」のように、数学の難問であった「ポアンカレ予想」を解いていく過程を描いたものです。解決した人物の素描や、他の研究者へのインタビューも丁寧だし、問題自体を数学の苦手な私のような読者のためになんとか伝えるように噛み砕いて書いてくれたりもするのだけれど物足りない。その理由としては、この「ポアンカレ予想」解決の衝撃具合についての書き込みが少ないこと、グリゴリ・ペレリマンの抱えた闇への接近度が弱いからじゃないか。

ポアンカレ予想は皆さんご存知の通り、トポロジー分野の内容ですがトポロジー自体が分かりにくいからなあ。ペレリマンがフィールズ賞を拒否したとか、人格が少年時代と180度反転してしまっているとか、もっともっと掘り下げてかけたと思う。逆にいえばサイモン・シンがこの分かりにくい数学分野を一般の人たちでも感動できるレベルにまで噛み砕いて描き切れたことのほうが奇跡なのかもしれないという気もする。

あと副題の光と影の、影ってなんだよ?そこを暴いていないのに安易にタイトルにつけないで欲しい。

数学好き、数学史好き、天才好きにはお勧めしますけれど、本書を読む前にまず「フェルマーの最終定理」をとにかく読んで欲しいね。これはすべての人に勧める。


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「天才」を知るならこの三冊です。変人ばかりだけどそれがいい。