なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)
幼い息子が奇病にかかり、あと十余年の命と宣告される―理不尽と思える不幸に見舞われたラビ(ユダヤ教の教師)が絶望の淵で問う。神とは、人生とは、苦悩とは、祈りとは…。自らの悲痛の体験をもとに、旧約聖書を読み直し学びつかんだのは何であったか。人生の不幸を生き抜くための深い叡智と慰めに満ちた書。
身を引き裂かれる。凄いタイトルだけど内容もヘヴィだった。著者の体験した「理不尽」の理由を求め信仰している神と相対しながら、旧約聖書の文言を読み解くことで解決しようと格闘した本です。
著者は宗教者なので、「理不尽」を与えるのは神なのだろうか、その「理不尽」は受けた人の日ごろの行いのせいであろうか、あるいは「理不尽」には理由があるが人間には深遠すぎてわからないので逆に「幸せ」であるととるべきなのか、などといった興味深い考察を行っています。
私達も普段、大小、意識無意識があるにせよ理不尽なことを強要されながら生きているわけですが、人生を大きく歪ませるような理不尽に接した場合の心の処し方、またそんな友人がいたらどのように接するべきであるかが分かります。こういうことは実際に起きてみないと考えませんからね。ですから本書で先に精神的バリアーを張っておく、というのは大いに有益であるかと思います。「慰める」とはこういうことなのだなあ。
最後に。この本を教えてくれたDainさんに感謝します。
参考作品（amazon）
H.S. クシュナー作品集
